生活があるので辞められません!

それは、うちの会社に飛び込みでやってきたある女性営業の話。

少し、生々しい話ですが、真実のなので簡単にお話しします。

私が最塾を始める数年前のこと。

私が1人で事務所にいたとき、突然一人の女性営業が飛び込んできた。

「もう、めんどくさいな~」と思いながらも、トークはグダグダだが一生懸命な姿勢に、少しだけ話を聞いてあげようと思った私は、横にあるテーブル席に座らせ、お茶を出してあげた。

いろいろと話を聞いていく中で、当時20代後半だった彼女は、2年前に離婚して子供を2人抱えながら女手一人で生活しているというなかなかの過酷な現状だった。

そんな彼女に「売れてますか?」と聞くと、「いえ。なかなか思うように売れないです・・・」と小さな声でボツリと言った。

そして、売れない以上給料も良くない。

でも、生活していかなければならない。

最初は「同情して欲しいのかな?」なんて、ひねくれたことを思って聞いていたんです。

「それは、大変ですね。じゃあ、どうやって生活してるの?」

そう聞いた時、彼女は黙ってうつむいてしまいました。

「よけいなこと聞いちゃったな~」と、思っていたその時、

彼女が重い口を開き、私にこう言ったのです。

「月に何回かバイトしてるんです。夜の・・・」

「ああ、夜の蝶ですね」

「いえ・・・風俗です」

昔の旦那から養育費ももらえていない。

でも、子供を2人抱えて生活しなくてはならない。

苦肉の策として「風俗」でバイトしている。

それも、本当は嫌で仕方がない。でも、生活のためにはしかたない。

そして、いつしか涙声になった彼女はこういってきました。

「私の人生は一体なんなのでしょうか?」

その言葉を聞いた時、私の心に強力な一つの感情が湧いてきました。

同情? 哀れみ?

いいえ。

「怒り」です。

もちろん、風俗でバイトして生活していることの怒りではありません。

それも、立派な仕事です。

そして、それは彼女の「自由」です。

私の怒りは、

「売れば売るほど稼げる営業の仕事に就いてるにもかかわらず、売れないからと言う理由で嫌々バイトをし、挙げ句の果てに自分の人生を悔やんでいること」

に対する怒りでした。

「そんなに嫌なら、バイト辞めれば良いじゃないですか!」

「私だって、本当は辞めたいんです!」

「でも、それでは、生活が出来なくなってしまいます!」

「何言ってるの?営業で売ればいいんでしょ!売れば!」

「そんなに簡単に売れるなら、あんなバイトしてません!」

長い沈黙が続いたあと、私は冷静に聞きました。

「本当に、そのバイト辞めたいの?」

「でも、生活があるので辞められません」

「じゃあ、この営業で売れて生活できるようになったら辞めたいの?」

「でも、きっと私向いてないんです。営業」

「向いてる向いて無いを聞いてるのではありません!」

「本当に営業で、売れるようになれば辞めたいんですね?辞めれるんですね?」

「・・・はい。」

「良いでしょう。分かりました。今から時間ありますか?」

「お客もいないので・・・ありますけど・・」

「では、今から2時間であなたを売れるようにしてあげます」

「えっ?」

「最初に言っておきます。あなたが今日うちに飛び込んできた目的である契約はしません。

しかし、あなたが一日も早く嫌なバイトを辞めれるように、営業を教えてあげます」

「・・・・」

「自慢じゃありませんが、私はお客に初めてお会いしてからわずか5時間程で、数千万円の家を決断して頂く営業力を持っています。私のようになるのは確かに難しいですが、先ほどのあなたの営業を見てると、あなたの今のどの部分をどのように改善すれば売り上げを上げることが出来るのかを修正することは、さほど難しいことではありません」

「どうします?やりますか?やりませんか?」

「もし・・・本当なら・・・」

「本当です。その代わり教えたことは絶対に実行してください。いいですか?」

「はい。」

「では、早速始めましょう」

教えることが大嫌いだった私が、なぜ、教える気になったのか?

実は、彼女の為ではない。

彼女の「子供達」のためである。

「大好きなお母さんが自分たちのせいで嫌々苦痛を感じながらバイトをしてると子供達が知ったらどう思うだろう」

「自分たちが着ている服は、実はお母さんが人生を悔やみながら嫌々バイトしたお金で買ったものだと知ったら子供達はどう感じるだろう」

「大好きなお母さんが、実は自分の人生を悔やみ、後悔しながら自分たちを育ててくれたと知ったらどう思うだろう?」

その数時間、彼女は必死で学び、そして帰っていった。

その後、彼女は本当に一生懸命、命がけで頑張ったのだと思う。

自分のために・・・

そして、何よりも

「子供達のために」

だからこそ、

数ヶ月後に「バイトを辞めた」ことを伝えにきた彼女は、

まるで「別人か」と見違えるほどの「自信」と「笑顔」になっていたのだと、私は思っています。

もしかしたら、これ読んでるかもしれないので、あの時言いそびれた言葉をこの場を借りて伝えます。

「あなたのおかげで人に教えることの喜びを知りました」

「あなたのおかげで、人の喜びが自分の喜びに変わることを知りました」

「感謝してます。ありがとう」

追伸・・・

今度こそ、幸せを逃がさないように!

おめでとう。

幸せになるんだよ。

有川高史